『菊と刀』Ruth Benedict

あらすじ
文化人類学者の筆者が日本人の価値観を暴いた書。

キーワード
・「応分の場」
・恩
・名誉
・恥
・日本人の気質

「応分の場」
江戸時代、日本では厳格な身分制度が敷かれ、身分ごとに行動が著しく縛られる一方、身分ごとに特権が与えられた。これを経験した日本人は階層的な社会に慣れていて、身分に応じた行動規範に愛着と信頼を寄せている。

「恩」
日本では互恵行為をお金の貸借のように細かく管理する。恩は借りであり、同じだけ恩返しできなければ落ち着かない。恩には義務と義理の2種類があり、前者は天皇や親への無制限の借り、後者はそれ以外の人からの有限の借りを表す。

「名誉」
日本人は名誉を守ることを重視する。そのため名誉を失うような機会は極力減らされていて、侮辱されればそれに復讐することが美徳とされるが、一方で名誉を失うのを恐れて身動きが取れなくなることもある。

「恥」
日本人は恥の文化に慣れ親しんでいて、常に人に重んじられるように行動する傾向がある。自分の行動が他人に見られていることを前提に行動し、特に、身分に応じた礼儀作法を守る所を周りに見てもらうという特殊な方法で自らの立場を守ろうとする。

「日本人の気質」
日本人は名誉を得ること、尊敬されることを最も重視する。一方、のけ者にされることを極端に恐れる。意見や行動を翻すことが容易にできる。侮辱には憤慨し、復讐をする。ひたむきに努力する時期と無気力な時期が交互に訪れる。身分的な社会を信じていて、細かな行動規範を信頼し、愛着を持つ。一方未知のものには大きな不安を抱く。自分を犠牲にしてでも義務を果たす人を強い人とみなす。

『道は開ける』 デール・カーネギー

『道は開ける』 デール・カーネギー

 

悩み、不安を解消する生き方の原則を述べた本。

 

1,今日一日区切りで生きる

 悩みは、常に過去や未来のことに気を取られている人に訪れる。過去は割り切るべきだ。未来に対して計画を立てるべきではあるが、常に未来を心配する必要はない。朝起きてから寝るまでに注意を集中するべきだ。

 

2,悩みを解決するための魔術的公式

①「起こりうる最悪の事態とは何か」と自問すること

②やむを得ない場合には、最悪の事態を受け入れる覚悟をすること

③それから落ち着いて最悪状態を好転させるよう努力すること

 悩むことと考えることは違い、悩んでいるときには思考力がなくなってしまう。

 悩んでばかりいるときは、まず最悪を考え、それを受け入れることで、もうどう転んでもそれ以上にしかならない状態を作るのがよい。すると気持ちを落ち着けて、思考力を取り戻すことができる。そして、実際に行動を起こすことができるようになる。

 

3,悩みがもたらす副作用

 悩みが具体的な病気や体の不調と密接に結びついていることを説いている。悩みがもたらすのは、ニキビ、発疹、白髪、抜け毛、しわ、虫歯、関節炎、胃潰瘍、心臓病、甲状腺の異常、などなど極めて多岐にわたる。特に関節炎ではほとんどの原因が悩みによるものだといわれているし、極めて頑丈な人間でも悩みによる病気からは逃れられない。悩みは健康にとって最も有害なもののひとつである。

 

4,悩みの分析と解消法

 2で述べた公式だけですべての悩みが解決できるわけではない。悩みを解決するためには、以下の四つの順番で思考するのがよい。

1,私は何を悩んでいるか?

2,それに対して私は何ができるか?

3,私はどういうことを実行しようとしているか?

4,私はそれをいつから実行しているか?

 まず問題がなんであるか把握できなければ解決は当然できない。悩んでいる人はこの当然の事実に気づいていないことが多い。また人間は自分の考えに沿った事実しか集めたがらない傾向があるから、他人のために事実を集めていると思って、あるいは、自分とは反対の立場から事実を集めていると思って情報収集するのがよい。

情報収集が終わったら自分ができる行動の選択肢を考え、そしてそのうち一つを選択する。大事なのは、行動を選択したら即座に行動に移し、振り返らないことだ。ある一定以上考えても混乱と悩みが増すだけになってしまうというラインがある。そこに到達したら、もう考えるのをやめ、行動することだ。

『ザ・コーチ』 谷口貴彦

 『ザ・コーチ』(谷口 貴彦)の内容のまとめ(章ごと)

 

あらすじ

 しがない営業マンである星野が、公園で大蔵というおじいさんにあい、目標を決めて行動することで人生が変わっていく様子が語られる。

 

§2

 大蔵は、夢を達成するためには「目標の達人」になる必要があるという。そこで5つの言葉「目標」「目的」「夢」「ゴール」「ビジョン」の意味について考え、辞書を引いてくるように星野に宿題を出す。 

 星野はその宿題をこなすうちに、自分を含めた周囲の人がこれらの言葉をあいまいにとらえていたことに気づく。我々はふつう、経験を言語化して記憶するから、言葉をいい加減に使っているとせっかくの経験、知識を整理整頓することができず、使いたいときに使うことができない。目標の達人になるには、まずこれらの5つの言葉をしっかりと理解することが必要だ。

 まず、目標とは、<目的を達成するために設けた目当て>である。すなわちあくまで目的を達成するための目印に過ぎない。

 一方、目的とは、<成し遂げようと目指す事柄>である。

 これらの二つをまとめると、目的がまず始めにあり、それを達成するために目標を用意するということだ。目標ばかり求め、目的を見失うという間違いを多くの人が犯すが、最終的な目的が定まっていなければ、努力するモチベーションを保つことはできない。

 また、これらに似た言葉としてゴールがあるが、これは<競技などで、着順の決まる一番最後の地点・決勝点>という意味だ。つまり、目的のための最終的な目印がゴールなわけだ。

 目的やゴールだけでは、それを達成する手立てがわからない。一方で目標だけではそれを達成する意味が分からず、モチベーションが保てない。夢を実現するためには、これら3つを兼ね備える必要がある。

 さて、次に、夢は、<将来実現させたいと、心の中に思い描いている願い>という意味だ。決して大きなものである必要はない。素朴なものでかまわない。これこそが叶えたいものだ。そのためには、まず夢を書きだすのがよい。実現可能かどうかは置いておいて、とにかく夢を書きだす。すると、その中から特に実現したいと思うものがあるはずだ。そしたら、あとはそれを「目的」として、それにむけて「ゴール」とそれを達成するための「目標」を立てて実現への道筋を立てて、努力すればよい。

 努力するためのモチベーションを保つために役立ってくれるのが「ビジョン」だ。ビジョンとは、<将来あるべき姿を描いたもの>であり、想像するだけで感情を喚起するようなものだ。目的を立てたら、目的が達成された後の様子を想像し、そのビジョンを頻繁に(できれば毎日)思い起こすことで、モチベーションを保つ助けになる。

 これらの話をまとめると、まず達成したい夢があり、その夢の中から特に達成したいものを選んで、目的とし、それを達成するために目標やゴールを用意し、あとは努力する。そのモチベーションを保つ助けとするために、目的を達成した後のビジョンを日々イメージする。

 夢を描き、目的を決めたり、ビジョンを思い描いたりするのは右脳の役割であり、目的を定めてからゴールや目標を定め、努力するのは左脳の役割であり、脳の両方を使うことが大事である。

 

§3

 目標、ゴールを設定することのベネフィットについて。目標、ゴールを設定して行動している人は、そうでない人に比べて以下のようなメリットを享受できる。

・多くの共感者や協力者と出会え、より大きなことをなせる。

・決断力、選択力が増す

・知識、能力、道具が増えて価値ある人になる。

パラダイムが変わっていき、想像もできなかった自分になれる。

・自信が生まれ、さらなるゴールを設定する勇気を出せるようになる。

 

§4

 目標やゴールを立てて実行していくためには、これを妨げるような心理的要因を避けたり抑えたりする必要がある。このような要因には、

・目的達成に失敗した経験からくる学習性無力感

・選択に対する恐怖感

・変化に対する恐怖感

・他者からの非難への恐怖

・無知への恐怖感

などがある。

上の三つについてはそれぞれ、

・目的を達成することだけではなく、その過程で得られる能力、知識にも意味があると考えるようにする。(価値観を変化させる)

・日ごろから小さな決断と選択を訓練する。(メールは読んだらすぐ返信か削除する、食事のメニューはすぐ決める、など。)

・日ごろから小さな変化を起こし、変化に慣れる。(毎週、毎月部屋のレイアウトを変える、普段は絶対着ない服を着る、など。)

 などの対処法がある。

 またそれ以外についても、変化の目標を始めは小さいものにし、徐々に大きな目標にしていくことで、恐怖感を克服することができる。

 

§5

 まず、組織が個人に目標を与えるときのポイントについて。

 組織は組織としての目標を持っているが、それをそのまま個人に与えてしまうと、個人は目標が自分のものであると感じることができず、モチベーションを高く保つことができない。

 それぞれの人にはそれぞれの欲求、夢がある。まずはこれを把握した上で、それと組織の目標の接点を見つけることが大切だ。そうして定められた目標は、個人的なものであり、自分のものであると感じられる。すると、おのずとモチベーションも上がり、高いパフォーマンスを期待できる。

 次に目的と目標の関係について。

 山の頂上に上りたいと決めたら、その目的地は変わらないが、そこまでたどり着く方法はたくさんある。徒歩で登ってもいいし、車で行ってもいいし、ヘリを使ってもよい。同様のことが目的と目標の関係についてもいえる。目的はひとつだが、そこにたどり着くまでに設定する目標の取り方は無数にある。このような関係を理解し、目的を常にゆるぎなく持って、しかし目標の取り方は柔軟にすることがとても大切だ。

 

§6

 ひとつめに、目標、ゴールをより有効にするためのポイントについて。

 ゴールに到達するためには、以下の三つがあるとよい。

・ゴールにたどり着くのに必要な要素

・ゴールを達成した時のビジョン

・ゴールに到達するための工程表

一つ目はゴールに到達するためには何が必要かを教えてくれる。

二つ目はゴールを到達するために努力するモチベーションを与えてくれる。

三つめは具体的にいつ何をすればゴールにたどり着けるかを教えてくれる。

 また、何がモチベーションになるかは人によって違うから、ゴールを達成するにあたってなにが自分のモチベーションになるかを把握し、それを計画に組み込んでいくことも大切だ。

 二つ目に、ゴールを設定するための具体的なポイントについて

 どんな目的を達成するか決めたら、それを達成するのに必要なゴールを設定しなければならない。これにはゴールツリーと呼ばれるものを書くのが有効だ。ピラミッドを書き、その一番上に目的を、その下にそれを達成するのに必要なゴールを複数書き、さらにその下にゴールを達成するために必要な要素を書いたものだ。

 こうすることによって、目的に最適化されたゴールを用意することができるし、生きがいや、やりがいにつながる目的と、ゴールをセットにすることで、ゴールを達成するモチベーションを保つことができる。

 このようにしてゴールが決まったら、次はゴールに到達するために必要な要素を書いていく。この要素は「知識」「能力」「ツール」に分けて記述するとよい。具体的に書くことで、より行動に近づけることができる。

 ここまで来たら次は行動計画を作る。

 ゴールに到達する期日を決め、先ほど挙げた要素を適切な順番に並べ、それぞれの要素を達成する期日を決める。それぞれの要素を達成することを、目標とするのだ。

このとき目標の立て方にはいくつかポイントがある。

・"私"が主語となるような文章にすること。(自分がコントロールできることに着目できるようになる)

・「いつ」「何が」「どうなる」という表現で書くこと。

・期日をはっきりさせること。(×来週中→〇5月10日)(期日が曖昧だと直前になるまでやらなくなることが多い。)

・目的とともに書くこと。(目的をはっきりさせることでモチベーションを保てる。)

そして一番大事なのは、目標が単に"やるべきこと"ではなく、目的までの"通過点"であるとわかるような表現にすることだ。目的がはっきりすることで、モチベーションを保ちやすくなるし、「単にやるべきことをやったか?」を考えるのではなく「目的のために何ができたか?」を考えることができるようになって、様々な柔軟なアイデアを出すことができるようになる。

(例:私は、最後まであきらめないでモチベーションを高く保つために、5月10日に、同じ宅建合格を目指すライバルを二人持っている)

(同時期にやる目標は必ずしも一つでなくてよい。同時にいくつかの目標が処理できるなら、そちらのほうが好ましい。)

 

§7

 まず、上述の手法を用いた時のメリットが星野の視点で語られる。

・自分の目的やゴールを考える時間が増え、ただ流されるように過ぎ去る時間が少なくなる。

・ゴールを持って、ビジョンをいつも描いている人は、それが顔に現れる。それが何とも言えない魅力となり、他人にも伝わる。

 次に、ゴール設定をさらに効果的にする方法が語られる。

 まず、ひとそれぞれ価値観が違うため、効果的なゴール設定の方法も人によって違う。自分がどんな価値観を持っているかは、どんな言葉が自分の心に響くか調べることでいくらかわかる。ゴール設定をこれらの心に響くワードを用いて行うようにすると、よりモチベーションを上げることができる。これらの言葉は目標やゴールだけでなく、日常でも頻繁に使うようにするとなお効果的だ。

 最後に、目標の達人になるためのアドバイス

・成功する人は、やろうと決めたことを最後までやりきる人である。

・一番大事なことは、常に目的に向かって何らかの行動を続けることである。

・人によって行動の特定は違うから、他人の行動と自分の行動を比べず、あくまで自分の中でいろいろなパターンを試し、続けられるやり方を見出すこと。

・行動計画に、定点観測を盛り込むのも有効である。ただし、この定点観測はあくまで目標に対して自分がどこまで到達しているかを計るものであって、他人と比べるためのものではないことに注意。

 

 

その他詳細

夢について。

 夢を書きだすときは目標ではなく願望であり、「叶ったら儲けもの」くらいで書くのがよい。目標の達人になるには、夢を自由に描いて、語る習慣をつけるとよい。書きだしたり思い描いたりした夢を何度も見ているうちに、「これは絶対叶えたい」と思えるようなものが出てくるはずだ。そしたら、それを目的にすればよい。